大阪市学童保育連絡協議会

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素案に対する大阪市学童保育連絡協議会の見解発表!

大阪市こども・子育て支援計画(素案)についての

私たちの考え方

 

20141225

大阪市学童保育連絡協議会

会 長  富 田 晃 彦

 

 

はじめに

 

 20154月から「子ども・子育て支援新制度」が実施されます。その中心をなすのが「子ども・子育て支援法」で「子ども・子育て支援給付」と「地域子ども・子育て支援事業」のふたつから構成されています。学童保育は後者の「地域子ども・子育て支援事業」に属し、1125日には「大阪市こども・子育て支援計画(素案)」(以下「素案」)が発表され、大阪市の「地域子ども・子育て支援事業」が提案されました。「地域子ども・子育て支援事業」は、国は13の事業(資料①)を示しており、大阪市では以下の12の事業が計画されました。

①延長保育事業(時間外保育事業)②児童いきいき放課後事業・留守家庭児童対策事業(放課後児童健全育成事業)③子どものショートスティ事業(子育て短期支援事業)④地域子育て支援拠点事業⑤幼稚園における在園児を対象とした一時預かり(預かり保育)⑥一時預かり事業(幼稚園在園児対象以外)⑦病児・病後児保育事業(病児保育事業)⑧ファミリー・サポート・センター事業(子育て援助活動支援事業)⑨利用者支援事業⑩妊婦健康診査事業⑪乳児家庭全戸訪問事業⑫養育支援訪問事業

 学童保育については②「放課後児童健全育成事業」として量の見込みと提供体制の確保が示されましたが、疑問の多い計画となっています。以下、私たちの「素案」に対する考え方を記します。

 

 

  •  いつから、児童いきいき放課後事業は放課後児童健全育成事業となったのでしょうか。

「素案」では放課後児童健全育成事業として児童いきいき放課後事業と留守家庭児童対策事業(いわゆる学童保育)の2事業を明記しています(資料②)。「事業実績」においても平成2641日付として児童いきいき放課後事業の実施数を記述しています(資料②)。「量の見込み」及び「確保方策」にも児童いきいき放課後事業を放課後児童健全育成事業としてカウントしています(資料②)。児童いきいき放課後事業は、文部科学省推進の放課後子ども教室です。放課後児童健全育成事業は、児童福祉法に基づいた法定事業です。両者はともに重要で、大阪市はともに充実を目指してきたはずです。

いつから、児童いきいき放課後事業は放課後児童健全育成事業となったのでしょうか。

 

 

  • 放課後児童健全育成事業は児童福祉法に基づいた法定事業です。

 放課後児童健全育成事業については児童福祉法で次のように定義しています。

 「この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学している児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。」(児童福祉法「事業」第6条の3②)

 放課後児童健全育成事業は放課後児童クラブ、一般的には学童保育と呼ばれています。それでは、児童いきいき放課後事業はどのような根拠で実施された事業でしょうか。

 

 

  • 児童いきいき放課後事業と学童保育が異なる事業であることは、大阪市が明白に証明しています。

 児童いきいき放課後事業と学童保育についてはすでに大阪市は明確に「今後の大阪市放課後児童施策のあり方~まとめ~」(20123/資料③)で、ふたつの事業の性格を明示しています。

  • 「基本的考え方」

本市及び国における放課後児童施策が「全児童対象施策」(放課後子ども教室推進事業)と「留守家庭児童施策」(放課後児童健全育成事業《ただし、「子ども・子育て支援事業」への移行が検討されている》)との並立で実施されていることも踏まえ、総合的に検討した結果、本市放課後児童施策は「全児童施策」と「留守家庭児童施策」の2施策として捉え、実施していくことが望ましい。(「あり方~まとめ~11ページ」)

  • 「児童いきいき放課後事業」

本事業は(中略)、事業趣旨において文部科学省所管の「放課後子ども教室推進事業」と合致している。(「あり方~まとめ~12ページ」)

  • 「留守家庭児童対策事業(学童保育)」

本市の「留守家庭児童対策事業」は、(中略)児童福祉法(第6条の22項)に位置づけられた「放課後児童健全育成事業」として実施するものである。(「あり方~まとめ~17ページ」)

 

文部科学省が推進する「放課後子ども教室」に適合した事業が児童いきいき放課後事業であって、児童福祉法として行われている放課後児童健全育成事業でないことは、大阪市も「今後の大阪市放課後児童施策のあり方~まとめ~」で確認をしてきています。

 

 

  • 何故、放課後児童健全育成事業に児童いきいき放課後事業が含まれたのでしょうか。

大阪市の放課後施策の中で、放課後児童健全育成事業に適合するのは学童保育(留守家庭児童対策事業)といきいきクラブ(児童いきいき放課後事業内留守家庭児童対策事業)(資料④)の2事業のみです。全小学校で実施されている児童いきいき放課後事業が放課後児童健全育成事業に適合しないのはこれまで見てきたとおりです。実際に国から放課後児童健全育成事業として国庫補助が支弁されているのは学童保育といきいきクラブであって、児童いきいき放課後事業には支弁されていません(児童いきいき放課後事業には文部科学省の放課後子ども教室として補助金が出されています)。

では何故、今回「素案」で児童いきいき放課後事業が放課後児童健全育成事業に統合され表記されたのでしょうか。

ひとつはニーズ調査にあります。新制度に向けて見込み量を算定するためのニーズ調査(就学児童の保護者対象)が36日~319日に実施されました。放課後関連では「放課後の居場所を提供する事業」の項目で調査され、居場所事業の利用状況や今後の希望について設問され(資料⑤)、放課後事業の市民ニーズや、利用時間や内容の希望について回答が寄せられています。調査によれば、留守家庭児童のニーズ見込み量は38143人です。現行の放課後事業健全育成事業の利用児童は4,876人(学童保育3,516人、いきいきクラブ1,360人)ですから、今後33,267人の放課後児童健全育成事業の受け皿が必要です。施設数でいえば950ヶ所の放課後児童健全育成事業が求められますが(1施設定員40名で換算)、現行の施設数は142ヶ所(学童保育108ケ所、いきいきクラブ34ヶ所)なので808ヶ所が不足することとなります。大阪市が「地域子ども・子育て支援事業」として放課後児童健全育成事業を実施するならば以上に見た量を確保しなければなりません。

しかし「素案」は「放課後の居場所を提供する事業」で抽出された量をそのまま見込み量の目標値としています。つまり法定事業である放課後児童健全育成事業に求められる提供量を、放課後児童健全育成事業ではない児童いきいき放課後事業にすりかえており、意図的な「ごまかし」との批判は拭えません。

「素案」計画で放課後児童健全育成事業の「見込み量」そして「確保方策」の正確な数字を表出するためには、学童保育といきいきクラブの現行数字(施設数と利用児童数)をベースに、算出された留守家庭児童のニーズ量をスライドすれば、見込み量が確保方策量を上回ることは絶対になく、「待機児ゼロ」というまやかしの数字ではなく、正確な待機児の数字が確認できます。

全児童対策として児童いきいき放課後事業を全小学校で実施することで「居場所を提供する事業」の充足度は図れますが、現在の学童保育といきいきクラブだけでは、放課後児童健全育成事業は不十分です。

 

 

  • 放課後児童健全育成事業から児童いきいき放課後事業の記載の削除を求めます

 新制度における「地域子ども・子育て支援事業」の放課後児童健全育成事業は児童福祉法に基づく法定事業です。児童福祉法の根拠を持たない児童いきいき放課後事業が放課後児童健全育成事業に含まれることは間違いです。また、「大阪市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例」(資料⑥)が9月の大阪市議会で策定されましたが、これは学童保育に対する基準条例であり、児童いきいき放課後事業の条例ではありません。

「素案」段階で明らかとなったこの間違いを訂正し、「支援計画」策定時には、放課後児童健全育成事業から児童いきいき放課後事業の記載が削除されるよう、大阪市担当課へ要望していきます。